早稲田大学を中退した兄の話 前編

 

2018年秋、兄が東京のベンチャー企業に内定した。
内定したところは転職サイトを運営している会社で、都会ではCMもやっているらしい。会社のキャッチフレーズは「求めているのは即戦力」。

企業について疎い(うとい)自分にとってその企業がすごいのかどうか正直わからなかったけど、兄は内定に対してどこかまんざらでもない表情をしていた。

 


はたから見て兄は大企業志向が強いように思う。

実家に戻って兄の部屋を見てみると、そこには就活本が山のように積まれ、

日経新聞から記事を切り取ってできたスクラップブックや大企業の社長が書いた自伝、さらに「住友商事の流儀」と題したフォーブスの経済誌まであった。

「早稲田中退でAPU卒業っていう肩書きで挑んだけど、大企業は最後はやっぱり学歴やったわ」

チューハイを飲みながら兄はそう言った。
丸紅商事やJR九州までは最終面接まで通ったものの、内定の通知は貰えなかった。

「どこで間違えたんだろうな〜」
そう言っている兄の顔はお酒で真っ赤になっていた。

兄は早稲田大学を中退した。中退したのは大学1年の夏。

もともと兄は推薦で早稲田に入学した。理工学部建築学科。

兄は県内で一番の高校に進学した。それも推薦で入学しけど、中学生の頃は学年で4番になったりしていたから一般で受けても普通に合格していたと思う。

3年間ラグビーをやり通したりもしていた。

高校の頃も深夜2時まで部屋の明かりがついているのもしばしばで、かなり頑張っていたように思う。成績も上の下〜中の間をキープしていた。

「早稲田に行って建築士になりたい」

高校3年の秋、今まで建築の「け」すら言ったことのなかった兄の口からそんなセリフが出た。自分が高校1年の頃だった。

たぶん学校でたまたま早稲田の建築学科の推薦枠が空いていて、兄が立候補したんだと思う。そして2013年の11月頃、早稲田大学から兄へ合格通知が届いた。


つづく....

 

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