すうしぃの日常

大分生まれ大分育ちで大分在住、21歳の若造。別府市のAPUに通いながら、人生の大海原を絶賛迷走中。

なっちゃんとぼく 12ページ


「え!? すーさんどうしてここがわかったん?」

彼女は驚いた顔でぼくの前に立っていた、幻ではなく一つの現前するリアルとして。彼女は今まで通り血色も良くて、
目立った変化は見られなかった。

それでも薄青色の病衣を着た彼女の姿が、愛おしさで今にも泣き叫びたい気持ちにぼくを駆り立てた。

「前になっちゃん大学病院で薬もらったって言っとったやん?それでなんとなくここかな〜って思って来たんよ」

なっちゃんに会えた興奮と緊張で声が少しうわずる。

「マジか…!!でもお見舞いに来てくれた人はすーさんが初めてかな。ありがとね」

そう言ってなっちゃんはほほえんだ。
彼女には笑顔が一番似合っていた。

ぼく「なっちゃん、元気...?」

なっちゃん「今はまあまあいい方かな。

でも相変わらず高熱が出て一日中寝込むこともあるんよ〜」

なっちゃんは笑って話す。
ぼくの心配をはいて捨てるかのように。

ぼく「なっちゃんさ...学校にいつ戻って来れそう...?」
ぼくは慎重に言葉をえらんだ。

なっちゃん
「今かかっとん病気がいつ治るか分からんけんな〜。でも卒業式までには戻りたいな」

笑っていながらも、本当は病気がいつ治るか分からない彼女の不安が伝わった。
なっちゃんの病気のことを詳しくは分からなかったけど、命に関わる大きなものであることは確かだった。

話している時に不意にあることに気ついた。いつの間にか彼女の身長を追い越していたのだ。見上げてばかりだった彼女の顔を今では少し見下ろしている。

新鮮であると同時にどこか不慣れな感覚だった。

廊下の真ん中に立つ2人。
あのとき、世界はぼくらだけのものだった。

「おねえちゃん!!」
そのとき、一人の5歳くらいの女の子がなっちゃんにかけよった。

その子は頭に包帯を巻いていた。

「ここ小児病棟やけんさ、ちっちゃい子がいっぱいおるんよ。

やけんうちが時々遊び相手になるんよ。かわいいやろ?」

そう言って彼女はその女の子を抱きかかえた。

彼女が一人のお母さんのように見えた。

女子は男子より早く大人になるんだなと静かに悟った。

そして女の子が自室に戻ってからなっちゃんにお守りを渡した。

「え?これ貰っていいの?なんか古そうやし…」

実際古いお守りだった。
角がすり切れていて端の方は少し黒ずんでいた。あとで知ったけど、お守りが効くのは1年間だけらしかった。すでに5年はたっているシロモノだった。

「もらってもらって!! 古いお守りってなんか効果ありそうやん?」

そう言って彼女の不安をなだめた。
と同時にあせっている自分をごまかした。

「会えてよかったよ。
じゃあなっちゃん....気をつけてな」
ぼくはどこかありきたりのセリフを吐いた。

「うん、来てくれて嬉しかったよ。
お守りありがとう。大事にするけん!!」

バイバイ。
そうしてぼくはなっちゃんと別れた。



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なっちゃんに背中を向けて出口に向かう。

なっちゃんに会えた。
お守りも渡した。
それでも、何かがぼくの中に残っていた。

…これでよかったのか…?
........いや.........ちがう............

煮え切らない思いのなか、
不意になにかがぼくの背中を押した。

気づけばぼくはなっちゃんの方に向かって
走っていた。

...ちゃん.........
........っちゃん.........
.............なっちゃん.........


なっちゃん!!!!!!」


なっちゃんが振り向く。



ぼくはなっちゃんを抱きしめた。



つづく.......

 

 

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