すうしぃの日常

大分生まれ大分育ちで大分在住、21歳の若造。別府市のAPUに通いながら、人生の大海原を絶賛迷走中。

なっちゃんとぼく 9ページ

 

7月になると部活の市総体が始まった。
試合に出れるペア数が限られていたのでぼくは大会には出れなかった。
友達の踏んでいるテニスコートとぼくのいた応援席の数メートルがあまりにも遠く感じられた。

 

なっちゃんのいた吹奏楽部は大会で金賞をとった。金賞には九州大会に行ける「金賞」と行けない金賞の「ダメ金」があってなっちゃんたちは「ダメ金」の方だった。

 

1学期も終わり夏休みになると塾で夏期講習が始まった。朝の9時から夕方の6時まで塾で缶詰状態だった。でもそこにはいつも、よく笑ってよく泣くなっちゃんがいた。うしろから見えるなっちゃんの首すじが妙になまめかしかった。

 

2学期になると文化祭の合唱コンに向けてクラスで練習が始まった。ぼくはコーラスで、なっちゃんはピアノを弾いた。友達の指揮に合わせて真剣にピアノを弾く彼女の顔つきは、一人の大人のものだった。
綺麗だった。
背が伸びてなっちゃんに追いついたと思ったのもつかの間、彼女はまたぼくを置き去りにしていった。

 

10月の文化祭では8クラスのうち3位に入賞した。今まで一度もベスト3に入ることができなかったからすごく嬉しかった。

 

なっちゃんは席替えでぼくの左後ろの席になった。一度給食で出た福島産の桃ゼリーを食べなかったことで
なっちゃんと口論になった。
それでも結局ぼくは食べなかった。

 

「せっかく作ってくれた人が
かわいそうじゃん!」


彼女の悲しげな表情が、
今もぼくの胸を刺す。

 

少ししてなっちゃんがいつもより暗い顔をしている時があった。
当時「使える!悪用禁止の心理テクニック」といういかにもうさんくさい本を読んでいたぼくは、「明るい人が暗い表情をしている時は嫌なことがあったサイン!」という(よく考えれば当たり前の)内容を思い出してなっちゃんに声をかけた。

 

「え!!すーさんどうしてわかるんっ!?」

 

ぼくが予想していた以上になっちゃんは心底驚いていた。(あながち「悪用禁止」も間違いではなかったよう)

 

「あ〜もうホントあいつムカつく〜!!

なあすーさんもそう思わん?!」

 

なっちゃんはその日一日うっぷんの原因をぼくにぶつけてきた。塾の時もなっちゃんに愚痴を聞かされ、半ばうんざりしながらいつもより少し踏み込んだ関係に内心にやにやしていた。

 

そしてその頃から、なっちゃんは少しずつ学校を休むようになった。

 

つづく…